人生はハードコア、デスメタル

ハードコアパンク、デスメタル等のエクストリーム・ミュージックについて語るブログ

SWARRRM 『こわれはじめる - Beginning to break』レビュー もはやグラインドで括れない問題作&意欲作

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神戸のカオティックグラインドバンドによる、前作『FLOWER』(2014年)より4年ぶりにリリースされた作品。果たして、この作品をグラインドコア・アルバムと呼んでいいのだろうか。爆裂するファスト・パートこそグラインドコアの本懐であると信じる私のようなスピード狂にとっては、その部分に関しては物足りない。本作に収録されている楽曲の魅せ場は、エクストリーム・ミュージック界隈では否定されがちな、いわゆる「歌」の部分。正直、ダミ声でエモーショナルにメロディを歌い上げるパートも最初は違和感を感じたりもした。ほとんどの人は、真実の愛などもっていないし、夢を見たところで、くだらない大人に馬鹿にされてしまう今の世の中で、純粋に愛や夢について歌う彼らの姿を冷めた目で見ている自分もいた。元々、グラインドコアでくくってしまうのは無理のある音楽性とセンスを持っていたバンドであることは承知していたし、何より創作において、方向性や可能性を狭めるという考え方こそが、最大の悪であるということを踏まえれば、このサウンドが彼らなりの進化なのだろう。何度も言うが、ファースト・インパクトは確かに弱かった。それでも聴きこんだその先に何かが見えると信じて、アルバムを聴きこんだ。そうすると生々しい彼らの音楽が心に突き刺さった。泣きまくる尖ったメロディ、ジャパコア・テイストなダミ声ボーカル、時折絡むスクリーム、夢をみてもいいじゃないかと繊細に綴るポエム・・・そのどれもが愛おしく感じる。グラインドコア並び、エクストリーム・ミュージックとして、この作品を聴こうと思ってはいけない。音楽に優劣なんてないとよく言われるが、それでも音楽として高いレベルに位置する作品であることは断言しておきたい。これが芸術ってやつなのだろう。その崇高とも言える部分が鼻につくこともあるので、この作品を理解できないという人がいるのもすごく理解出来る。私もこの作品に色濃いポストロック/ポスト・ハードコア要素はそれほど好きではないからだ。とりあえず今はネットが普及し、簡単に視聴が出来るので、一度視聴してみてほしい。まさかこんな便利な言葉で、文章を締められる時代が来るとは思わなかった。今月発売される新譜の曲を視聴したところ、前作の延長線上でありつつも、よりエモーショナルな部分を強めている印象がある。そちらを聴くのも今から楽しみである。

https://swarrrm.bandcamp.com/album/beginning-to-break-2nd-press